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疑われたような気がして不服ではあった。しかし大学の事情をよく知るブライスの意見には一目置かざるを得ない。
「忘れないで,スキを見せないことだよ。
…さて,俺が日本にいる最後の夜だ。どう過ごしたい,優志?」
緊張感が消えて優しい声音に変わった。優志は『最後の夜』という言葉に動揺した。目が焦点を結べなくなった。
ブライスが椅子から立ち上がってベッドに向かい,優志の頬に手を添えて…少し上向かせた。それでもブライスに視線を向けることができない。
「激しくする?それとも,もう寝る?」
優志は一瞬でブライスに視線を合わせた。ブライスの目はいつも通りのグレーで,優しくまっすぐに優志を見つめ返してくる。流されないで自分で決めろ,ということか…。
目を瞑る。噛みしめるように,望みを言葉にする。
「昨日のように……抱き合いたい…優しく。でも昨日より長く…」
言ってから,顔から火が出るとはこのことかと思った。ブライスは艶めかしい微笑みを浮かべて優志の隣に座った。
「全面的に賛成だ。優志が寝なければ,いつまでも抱き合うつもりだ」
手を伸ばして優志を抱きしめる。優志の,痩せてはいるが決して華奢ではない身体をまさぐった。優志もブライスに手を回して発達した肩胛骨を撫でた。
「ブライスの,ここ,好きだ…」
「知ってる…。俺は優志の…ここ,最初から…ここだな」
優志の尻を撫でて,くすくすと笑った。
「…からかってばっかり…」
「いや,本当だ。初めて話しかけたときの,自転車をこぐ尻…。目を閉じればすぐに浮かぶ…」
「最初からそういう目で見てたんだ…俺のこと…」
「そうか,そういうことなんだよな。俺は優志に一目惚れしてたってことか…。優志に?それとも優志の尻に?確かめなくては…」
ブライスは優志をベッドにうつぶせに押し倒して,バスローブを剥いて尻をあらわにしようとした。
「ちょっ,ブライス!何するんだっ」
「…ジョークだよ…」
ブライスは手を緩めて優志を仰向けにし,ごめん,と笑ってそれから優志にゆっくりとキスをした。
―あとでゆっくり拝見するつもりだ…優志の尻は…
ふたりとも全てを脱いで,互いの身体を丹念に撫で回した。唇を押しつけ,舌を這わせ,強く吸い付いた。ブライスは二日前に露天風呂で付けたキスマークをなぞっては,重ねて新たな痕を残すという甘美な作業に没頭した。
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