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優志の身体の細部まで記憶に留めようとするかのように,余すところなく触れた。肌の感触を何度も確かめて,プラム色に代わった花びらを体中に纏ったその裸体に見とれて,深く息を吐く。優志はブライスに身体を撫で回され,舐めて吸い尽くされて,肌の上にくまなく触れられた痕跡を感じる。
愛する者同士の単純な行為が,最も尊いと感じられた。優志には愛されているという確信があったし,そしてそれ以上に愛していると相手に知ってもらいたかった。自分自身を相手に差し出し,相手を所有したいと切望した。
だから何度も相手の中に熱を放ったし,自分も相手のものを受け止めた。際限なくできると思った。
―愛しているから…
何度目かの熱を二人で放ったあと,優志はやはり,目を開けていられなくなってブライスの腕の中でたゆたっていた。
―ゆらゆら,してる…
「優志,眠いか?」
「ううん…,う…ん,ブライス,好きだ…」
「俺も優志が大好きだ。…十分に愛し合ったから,もう眠っていいよ」
「んー,…大丈夫,朝まで…」
―ゆらめいていたい…。ふたりしてボートで抱き合ってたみたいに…
「ゆらゆらって…」
「…おやすみ,愛しているよ」
横になった自分の胸元に,両腕で優志を抱き寄せた。
「ブラ…イス…」
寝入る前に自分の名前を呟く愛おしい唇にそっと口づけた。タオルで優志の身体をあらかたきれいにふいて,収まりのよい体勢でくっついてシーツをかけた。わずかな間接照明に浮かぶ優志のうなじにそっと唇を寄せた。
「愛している,優志。何千回も何万回も言うよ,聞いていても,聞いていなくても…。愛している。2年したらシアトルで一緒に暮らそう。研究して,食事を一緒にして,疲れてふたりして寄り添って眠るんだ。週末には湖でウィンドサーフィンして,本を読んで… そうだ,犬を飼おう,大きな奴だ。ふたりと一匹で,笑って暮らそう,優志」
すう…,すう…と,優志の寝息が聞こえる。
「もしも,万が一,優志がシアトルに来られないことにでもなったら…俺が仙台に行くから。研究に疲れたら酒を飲んで温泉に浸かって…畳の上で抱き合うか。ああ,それもいいな。優志には浴衣を着せてふとんで寝る。だから,シアトルでも仙台でもどっちでもいい。心配するな,優志,必ず一緒になる。愛しているよ…」
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