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空を見上げると、まだ星が瞬いていた。けれど、空の端が藍色に明けて来る。
光りに負けた星が、消えてゆく。
もうすぐ夜明けがやってくる。
倉庫から作業場へ、小麦粉やら砂糖やらを運び込み、
次の仕込みに入ってゆく。
ここは、作業場が狭いので、多くの材料は持ち込めない。
早朝の【森のくま】、
森のくまは人気のパン屋であった。
「一弘君、ライ麦粉も運んでおいてね」
森のくま店長、
善家 芽実(ぜんけ めぐみ)が俺に声を掛ける。
俺は薬師神 一弘(やくしじん かずひろ)高校二年生。
産まれて間もなく、両親が事故死し、
母の双子の兄、善家 安廣(ぜんけ やすひろ)が育ててくれた。
芽実は、安廣の妻であった。
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