第一章 彼岸の花

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「フランスパンで、ハムサンドが食べたいです」 「造っておくね」  芽実の横では、長年働いている、 飯沼が無言でパンの生地を切っていた。 飯沼は、今年五十歳になる男性で、 芽実がパン屋になったときに、協力してくれた人であった。  飯沼は、元は有名なパン屋の職人であったが、 森のくまが試行錯誤しているのを見て、アドバイスをしているうちに、 働くようになっていた。 森のくまを支えている、重要な人材であるのだが、 非常に無口であった。 「一弘君、飯沼さんの材料も入れてね」  女性ばかりの職場で、飯沼は異質ではあるが、 尊敬と信頼を置かれていた。
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