第1章 これもある意味記憶喪失

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
気がつけば、僕は水に覆われた袋の中にいた。 〝あれ?ここは何処だ? 何も思い出せない。〟 全く記憶が無い。 何故、僕はこの様な袋の中にいるのだろう。 僕は、袋の中をクルリクルリと回転し、足が袋にポコンと触れた。 〝えっと……なんだっけ……こういうの。〟 暖かい血が袋にかよっているのがわかるも、それが言葉にできないほど記憶が無くなっている。 〝思い出せない。〟 それどころか、衰弱してしまったかの様に眠くなってきた。 〝う……zzz……〟 僕は、再び眠りについてしまった。 「うっ!!うぅぅ…」 〝!?〟 僕は、天から響く様な声に、驚き目を開けた。 〝これは……いったい!?〟 僕を満たしていた水がどんどん無くなっている。 慌てた僕は、急いで水が逃げていく方へ向かうも、道狭く手でかき分け、進んでいく以外に方法がない。 「アァァァァ!!!」 僕がもがけばもがくほど、天の声は苦しそうな声をあげる。 だが、それに構っている余裕は、僕にはない。 〝くそッ!もう…〟 意識が遠のいていく。 目の前に、出口と思われる光が見えているのに。 〝もう…すこ………〟 頭が出口に出た瞬間。 僕の意識が遠のいてきた。 〝気を失って……たまるかぁ!!!〟 と言わんばかりに最後の力を振り絞り、道を通り抜けた瞬間。 僕は大きな手で掴まれ、お腹に付けられていたであろうひもの様なものを糸で縛られ切断されてしまった。 おそらく、あの水の中で生きていく為の生命維持装置の管だったのだろう。 そして、僕は大きな布に包まれ、抱き上げられた。 〝!?〟 目の前にいたのは、防護服の様な服を着た男の巨人。 〝こえぇー!!?〟 恐ろしさのあまり、僕は泣いた。 それはもう、今出せる精一杯の声で、辺りに聞こえる様に… それが今僕に出来る唯一の事。 巨人は、にっこりと笑うと、近くで寝ている女型巨人に、僕を見せ言う。 「元気な男の子ですよ?」と…… そして、僕は女型巨人に手渡され、抱かれる。 すると、先程までの恐怖が無かったかの様に消え、何故だか落ち着く事が出来た。 女型巨人は、僕を見て満面の笑みを浮かべ、その笑みから暖かいものが伝わってくる。 僕には記憶がない。 だが、これから新しい記憶となる体験が待っている。 僕はそう本能で悟のであった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!