6-1 密約

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 儀式の痕跡があちこちに残る茶色のホールに元剣士たちが集まっていた。 「我々の目指しているものは明らかだ。そのためでなければここにはいない」  片手は目の前の炎に歯を剥いた。 「衛兵地区へ、でしょ?」  炎はつまらなさそうに言った。 「そこに行くことが目的ではない。勝利か、死か。それだけが我らの目的だ」 「それは聞いた」 「だが、分かるはずはない。貴様には」  片手は炎から目を逸らさなかった。  炎も負けてはいなかった。 「分かってる」 「何がだ。貴様に何が分かる?」 「もういいよ、その話は。どっちにしたってさ、早いとこ向こうに行きたいのは行きたいんだよね。そのためにできること、色々お願いしてるよね」 「貴様のためではない。我々のためだ」 「ああ、はいはい。でさ、そのためなら何でもすんだよね」  炎はうんざりした調子で続けた。 「もちろんだ」  片手は不敵な笑みを浮かべた。 「うんうん、それだけ聞けたらそれでいいよ。お願いしたいことはもう分かってると思うし」 「分かる必要はない。そんなことより早く堀を埋めろ」 「それは赤い堀がやってくれてるから」 「遅い」 「分かってるよ。手伝ってもらったあれ、もうすぐ動くから。あれでまたグンと進むんじゃない」 「貴様はいつも自分でやらない」 「なんてこと言うんだよ。ボクはもっと大きな目的のためにちゃんとやってるよ、ちゃんと」 「大きな目的?」  片手が鼻で笑った。 「そうだよ。ボクはもう待たない。僕が実現する」  炎の表情は硬かった。 「貴様の目的など知らん」  片手が吐き捨てるように言った。 「アンタの頭じゃ分かんないよ」  炎はそう言って目を逸らした。 「どっちにせよさ、もうそろそろってこと。それだけは分かっといて」  炎が言った。  片手は馬鹿にしたように鼻を鳴らした。  周りの元剣士たちも下卑た笑いを浮かべた。  炎は両手を広げ肩をすくめた。  ここにいる男の誰一人、炎は信用していなかった。  おくびにも出さなかった。
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