第一章ー春、自称“犬”ー

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「緋色は甘えなくても私から離れて行かないから甘えたい時しか甘えてないわ」 「う、うん?うん、そっか。喜んでいいのかな?」 「喜ぶといいわ」 「随分、上から目線ですね」 喜んでおくけどね、甘えたい時にしか甘えない。これは喜ばしいことだと、でもああいう発言をされると計算してやってるんじゃないかと疑ってしまうものです。 「緋色はおっぱいとお尻どっちが好き?」 「ぶっ!突然だね……なんなの、その質問?意味あるの?」 「おっぱいね」 「え、いや。まあ、はい」 「変態」 「罵りたいだけじゃないか、お尻って答えてても駄目だったでしょ、これ。てか、どうして分かった」 「胸見すぎ」 「すみません」 平謝りである、もう謝るしかない。 僕もさ、男の子だしさ。あんな狭い部屋で女の子と、それも可愛くてスタイルの抜群の娘と一週間も暮らしてると欲も溜まるものでして、ええ。仕方ない、ことはないんだろうけど僕的にはどうしようもない。 あと、貴女の部屋着低防御力で破廉恥なんですよ。Yシャツだけとかやめて、せめてズボンかスカート穿いてください。Yシャツのサイズもあってなくてボタン閉まりきっていないし胸が凄い強調されてるんだよ。ただでさえ視線を奪われるというのに。 「触ってみる?」 「いいんですか!?」 「……」 「じょ、冗談ですって。そんな生ごみを見るような眼で僕をみないで下さい、飼い主さんですよ?」 「変態、のね」 ずるい、自分から誘ってきたのにまた貶された。下ネタ系統は誘われても乗ってはいけないと学習したよ、僕。 「緋色」 「なんでしょうか」 「今の会話、忘れないでね」 「え?なに?この先もこれをネタに揺すられたり恥をかかされたりするのかな?ごめん、お願いだから勘弁してください」 黙って空を仰ぐヴァイス。 どこか儚げで少し触れるだけで壊れてしまいそうで。どことなく、不安になった。
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