第一章ー春、自称“犬”ー

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「ど、どうぞ。たい焼きになります」 「あ、あの。神楽さん?本当にヴァイスは従兄弟でぺ、ぺっととかではないんだよ。ね?」 「さっきのは冗談」 「え?ええ、そ、そうなの?私てっきり黒井くんが女の子に対して、その、そう言うせ、性癖があるのかと……」 「ない、ないよ、どんな性癖なのさ。お願いだから僕を遠ざけないで、傷付くから」 「ご、ごめんね。で、でも一つ、ううん。二つ質問してもいい?これが解けたら、その。全面的に黒井くんの主張を受け入れられそうだから」 神楽さんは問う、その頭の耳とお尻の尻尾は?と。重ねて神楽さんは問う、その首に付けられてる首輪は?と。 ですよね、あまりにも普通にとけ込んでたい焼き食べてますけどかなり異質だ。獣耳と尻尾ですらおかしいのに犬用の首輪をしてるとなれば尚更。 なんと答えたものか。 「あ、あれだよ。お洒落、かな。猫耳とか流行ってるし」 「あ、あの。耳の方はカチューシャとかあるし納得できるけどし、尻尾ってどうやって付けてるの……?」 知識としてはある、あるよね。分かる、獣耳や尻尾が好きな人なら分かってくれると信じて説明はしないけれどあまり口に出せないあれがあれでこうなったら元々生えてなくとも尻尾は装備出来る。しかし、それを説明するのは不可能だ、普通に嫌われる。 かといって元々生えてるんだよなんて人間的におかしい、犬耳をお洒落と誤魔化したこともありますますマズイ。 「い、衣装だよ。ズボンに付いてるのさ!」 「そ、そう、なんだ。私はあんまりお洒落に詳しくないからあれだけど……そ、そっか。で、でもね、えっとヴァイスちゃん?お、お洒落なら犬用の首輪じゃなくて、チョーカーとかにした方がいいんじゃないかなーって」 「うん、考えとく」 よし、無難な対応だ。 ありがとう、ヴァイス。帰ったら沢山いいこいいこしてあげような。
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