第一章ー春、自称“犬”ー

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「緋色、よしよしして?」 「うん?どうしたの、急に甘えたさんだね」 「おねがい」 「してあげるつもりだったけど。ほら、おいで」 夕飯も食べ終わりお風呂に入ってあとはもう寝るだけというタイミングでヴァイスの甘えたスイッチがオンになった。狭い部屋なので移動距離はさほどないがどこか嬉しそうにてこてこと僕の座っている場所までやって来る。 「触っていい?」 「頭だけよ?」 「分かってるよ」 耳と耳の間、頭頂部辺りに手をおいて左右へ耳を巻き込みながら撫で撫で。とても幸せそうに目を細めめ尻尾も左右にぱたぱたと振られ上機嫌。 可愛い、と素直に思う、本当にこれ以上に可愛いものが存在するのかとさえ、思える。 「緋色」 「な、なに?」 「耳ばかりは、だめよ」 「あ、ごめん。ついつい、ね。すべすべしてて気持ちいいんだ」 どうやら僕は犬耳フェチらしく頭を撫でていると無意識に耳ばかりをふにふにして傾向にある。耳ばかりはくずぐったくてそこばかり触られるのは弱いそう。なのだが何度注意されても直らない。 「あのさ、尻尾って触っちゃだめかな?凄いもふもふそうで前から触りたかったんだけど」 「大丈夫、さわって」 完全に緩みきったヴァイス、ぱたぱたと忙しそうに反復運動する尻尾を掴まえてふわふわと軽く握ったり撫でたりして感触を確かめる。 「うわ、柔らかいんだね。へへ、癖になりそう」 「悪い顔してるわ。寝込みを襲うのは禁止よ?」 「そこまで不純な男ではないですって。ヴァイスの許可が出てないと触ったりしないから安心してね」 「緋色はいいひとね、じゃあ緋色」 「ん?」 「おっぱいも触ってみる?」 「え!いやいや、それは駄目だって。なんでそんなに僕に胸を揉ませようとするのさ!」 「許可がないと触らないっていうから」 意味がわからない、許可があっても触らないよ、胸は。弁えてるよ、どこの誰が出会って一週間の女の子のおっぱいを揉みしだくんだ。
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