第一章ー春、自称“犬”ー

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  「それで親御さんは?」 額に手を当て、頭を振る。 こんな斬新な家出をする子は初めてみた。 「いない」 「ほう、それはまたどうして?」 「捨て子だから?」 「いや、僕に聞かれてもねえ……」 半開きの瞳がパチパチと瞬く。 睫毛は長くて、眉は整っていて綺麗な青色の瞳をしている。真っ白な犬、と称したのは日本人では珍しい真っ白な穢れ知らない白髪がどこか懐かしさのある瞳の次に印象的だったからだ。 本人、言うところも嘘ではなくスタイルはボンキュッボンのないすばでぃー。おまけに衣服がカッターシャツ一枚となんとも破廉恥極まりなく、目のやり場に困る格好をしている。 胸の辺り、透けて桜色のなにかしからがうっすら見えてるけど気のせいですかね、気のせいですよね。見てはいけない、見てはいけない。 邪念を振り払うように話を続ける。 「と、取り合えず僕のでよければ着て」 ブレザーを脱いで手渡す。 「ありがと」 躊躇なく受け取り、袖を通してボタンは閉まったもののベストで胸がパツンパツンになって、見ようによってはさっきよりもえっちぃーくなってしまったような気さえする始末。善意が後悔を生むとは重いもしなかった。 「?」 頭が傾く。 線が細くて丸みのある輪郭がこちらを向く。 印象的な瞳、筋が通った高めの鼻梁、ぷるりとした赤くて健康的な唇。真っ白で腰元まで伸びる艶髪、腰元からは絹糸を紡いだように長くてお掃除道具みたいにふわふわした尻尾が伸び頭部にはツンと尖った犬耳が鎮座する。 体つきは男性が好きな肉感的なものでむちっとぷにっと、しかし欲しいところにお肉が集まって無駄なお肉は少ない。身長は女の子らしく少し低め、百五十五センチ前後だろうか。 首元には犬を自称するだけあって赤色で無骨な犬用の首輪がはめられておりえも言えぬ背徳感を醸し出す。なんだか分からないが一言でいえばやはり本人の主張から外れず可愛かった。
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