第一章ー春、自称“犬”ー

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   晩御飯も終わり、お風呂の時間。 すんなりとお風呂に入り、上がってきた少女は当然のようにベッドに横たわり、瞳を擦り始めた。湯上がりには僕のジャージを貸し出し裸Yシャツをなんとか阻止。 湯上がりの火照った体に濡れて一層艶やかな髪。 年齢も分からないがグラマラスなボディーが大人の色香を漂わせ、幼さの残る顔立ちがえも言われぬ背徳感を誘う。そんな女性が湯上がりに裸Yシャツでベッドにごろんしていては保たれる理性も保たれまい。 解放感のある服がお好みらしく嫌々ではあってもジャージを前全開で着てくれたことは救いである。ちなみにジャージの下は体操服で、高校にあるまじきダサさ加減でゼッケンに苗字を書いて固定されているのがテンプレートである。 「ひーいろー」 「んー?」 携帯ゲーム機から顔をあげ、少女と視線を交わらせる。瞳を擦り眠気を覚ますのも限界に達し今にもとろけそうで、重たい瞼と格闘していた。 「眠い」 「眠たかったら寝てもいいよ?あ、ごめん、電気消す?」 「うーん、明るいと眠れない」 「はいよー、おやすみ」 電気のリモコンを操作し豆球に切り替える。 淡いオレンジの光が狭く、楽しげではない男の独り暮らしの空間を包む。どうやら僕は見知らぬ女の子に死ぬほど愛されているらしく、彼女は僕の匂いのついた布団を抱き枕にして眠りについた。 「こなれてるなー、僕。あ、ごめん、電気消す?だって」 同棲三年目の彼氏と彼女か。 空虚な突っ込みを放ち、文字通り空しくなってお風呂場に向かった。扉を開けて直ぐ横、右手側が台所で左手側がお風呂場の前、間仕切りはないものの洗濯機があり脱衣所をかねる場所で目の前は五歩で玄関。 「なんじゃ、これ」 その全ての空間が水浸しであった。 洗濯機、洗濯かごに入った衣服、台所の壁やシンク、玄関の靴に至るまで、だ。凄まじい現状に一度、思考が停止して即座に犯人を特定し溜め息を吐いた。
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