2章 僕の異常な日常

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 そんな潰れた果物屋に今日も僕は帰宅する。すっかり変色したアルミのドアを開ける。    ギシギシ鳴る床を歩いて台所に行って空になった弁当箱を出す。木製の窓枠。薄いガラスごしにヒビと落書きがある古い壁が見える。どう見ても昭和のものだ。    ウチの壁も所々、崩れてて、どうやら土を固めて作った事が分かる。そのせいかどうか分からないけど虫が入り放題になっていた。      父のいびきが聞こえる。僕は静かに歩いて2階にある自分の部屋に学校のリュックを置くとカズ美の姿を探した。部屋にはいない。    学校のカバンはあったから店先まで出てみる。      かつて商品の果物が並べられて父と母が忙しそうに接客をしていた店のレジにカズ美が座っていた。    何をしているのか僕は知っている。     「ただいま。ジャンプ買って来たぞ」   「うん。あとで一緒に読も」    妹は振り返って答えると掃除に戻った。    レジ周りを拭いてから、その上の人形。S市に伝わる商売繁盛の神様、ゴロウくん。その人形を誰に言われるまでもなくキレイにするのが、店が潰れて以来のカズ美の日課になっていた。
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