不寝番

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不寝番

 もう十年くらい前のことだ。  父方のばあちゃんが亡くなって、家のある田舎町に家族で行った。  土地柄だろうけど、通夜も葬式も自宅で行われるらしく、俺達はばあちゃんの家に泊まることになった。その時に、不寝番を割り振られた。  やることは単純で、蝋燭の火が消えないようにする。線香が燃え尽きないようにする。時々、派とけ様の側に置いた地遺産鐘みたいのを鳴らす、これだけだ。  高校生の俺にはその行動の意味が意味が判らなくて、聞いたら、遺体に悪霊が憑りつかないために必要なことだと言われたけれど、やっぱり納得はできなかった。  それでも必要なことである以上、役目は果たさなければならない。  十代の若さと体力、試験勉強などで夜更かしも平気なことを買われ、俺が番をするのは午前二時から午前四時の間となった。  早い時間に仮眠をしておいて、一時間くらい前に起きた。時間までにきちんと意識を覚まし、二時少し前にばあちゃんの亡骸が安置された部屋に行く。  これまで番をしていた叔父さん達が、頼んだぞと言いながら部屋を出て行った。  ばあちゃんの亡骸の側に座り、携帯ゲーム機の電源を入れる。他の時間は何人かいるけれど、この時間は俺一人だけだ。暇潰しでもしていないと寝てしまいそうだから、蝋燭と選考に気を配り、時々枕元の鐘を鳴らす。それさえきちんとやってのけていたらゲームくらいはしててもいいよな。  深入りはしない程度のパズルゲーム。頭も指先も使うから、二時間くらいコイツで楽々過ごせるだろう。  そんなことを思いながらゲームをしていた…筈だった。  ふと、強い視線を感じ、俺は室内を見回した。  部屋の中には誰もいないし、もちろん入って来る人もいない。でも確かに視線を感じる。それもかなり近くからだ。  もう一度部屋中を見回すと、どうしてか、ばあちゃんの顔にかけられていた布が少しめくれていた。  俺が動いた拍子にでもめくれてしまったのだろうか。  元に戻そうと、慌てて白い布に手をかける。その時に、ちらとばあちゃんの顔が覗いた。
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