第7話 ノンフィクション率25%

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「人の顔、名前に関連する事を主に喪失しておいでです」 「先生、どうにかならないのですか?」  さめざめと泣きながらお医者に訴えているのは自分の『母』らしい。  らしい、としか認識できていないから、その姿を見ても感じるのは『気の毒に』なのだ。  客観的に考えて、薄情な子供である。 「ほら、最近流行りの記憶の再生とか再現とか、あれは出来ないんですか?」 「あれはご本人がバックアップを記憶バンクに保管してある場合に行える処置です。それに全喪失の場合です。部分喪失で復元を行えば、今、持っていらっしゃる記憶が上書きで喪失してしまいますよ」 「でも、でもですよ? この子、目新しい物好きで記憶の保管はしてるんです。上書きされてもそれはもともと全部この子なんですから問題ないですよね?」  いやいや、あの技術は記憶のデジタル化が可能になって保管出来るようになったっていうもので、復元は臨床段階のはずだ。なにしろ被験者が圧倒的に少ないんだから仕方がない。
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