新しい靴を履いて

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久しぶり、というと孝之は、ん、とだけ答えて煙を吐いた。 孝之のにおいだ、と少しホッとする。 そのまま言うと、孝之は肩で笑った。少し恥ずかしそうで嬉しそう。 嬉しそうだと感じるのは、自惚れだろうか。 火を消して、「久しぶりでもないよ。この前は先週だろ」といいながら、歩き出した。 私はそれに付いていく。 孝之と会っていない間に、こちらはいろいろと準備し、急速に社会人になろうとしているのだ。 変わらない孝之を見て懐かしく感じたのかもしれない。 そんなこと孝之には言えないから、そっかー、とだけ言って笑った。 後ろから孝之を見つめるのが大好きだった。 とくに、意外なほどに大きい背中は完璧だ。 背筋から肩、肩甲骨付近の名前もわからない筋肉に至るまで鍛えられているのが服の上からもわかる。 週末はよく、その背中にコバンザメのように貼りついて寝た。 私は孝之の後ろを一生懸命ついていく。 昔と変わらない。孝之は中学の頃から歩くのが速かった。 その後ろをついていく私は、だれよりも孝之の背中を見てきた。 誰にも言わない私の自慢だった。
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