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「頭を上げて下さいまし…。その事については怒っておりませんので。…私としても、見知らぬ地を冒険出来て悪い事ばかりでは無いと思ってる位なんですよ?」
そう言ってハニカム、シズクさんにその場にいた先生軍団が目を見開く。
直後ににへらっとだらしない顔をする。
まるで、天使だ…!とでも言いたげな表情だ。
エレオール先生とホスト先生だけはキチッとしていたけどね。
「恐れ入ります…。お若いのにしっかりしていらっしゃる。」
「いえいえ、お母様とお父様の教えの賜物です。」
エレオール先生に、照れたように返すシズクさん。
パッと見、ホントに演技しているようには見えないから凄い。
「奥ゆかしい方なのですね。所で、シンジュクニチョウメについてお伺いしてもよろしいですか?場所が分からなくても、土地や気候の特徴から大体の場所がわかるかもしれません。」
エレオール先生がそう言う。
これは、ヤバイんじゃない?
ワンダーランドの知識がほぼゼロのシズクさんが応えられる訳が…
とか思っていたけど、案外ツラツラと話すシズクさん。
ベースは江戸時代の日本で、そこからリアリティのある嘘を、嘘と思えぬような言葉遣いで展開していく。
魔法は禁止された土地で、閉鎖的な国だとか説明してるけど……新宿二丁目は国ではない!と突っ込みたい。
そして更に嘘は加速して行き、厳格で由緒正しい家柄だとか、甘えん坊の弟が心配だとか、はては趣味の蹴鞠を今度一緒にやろうだとか…。
もはや、天晴れとしか言いようがない。
その間、俺達は完璧に蚊帳の外である。
「なぁ、あれ全部嘘…なんだよな?」
俺と同じ事を思ってたのか、コウルが声を潜めて聞いてくる。
「うん…」
「マジかよ…俺、素直にすげぇと思うわ。」
「ね、世の中信じられなくなりそう…」
「だな…。」
ただただ呆気に取られる俺達。
「失礼します…あの…お料理が出来ました。」
そうしていると、厨房の中からコックさんが顔を覗かせてビクビクとしながら声を掛けてくる。
お…!
色々あって忘れかけてたけど、ご飯だ!
やっとありつける!
俺はそう思いつつ、軽く小躍りしそうなのをこらえた。
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