第1章

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ーーーー 「なぁ二郎、お前あれやるだろ?」 「あれって何だよ。」 学校が終わり、いつものように親友の浩輔( コウスケ)との帰り道に不意にそう尋ねられる。 「あぁ?決まってんじゃねぇか、バケハン5。」 最近発売したばかりのゲームソフトだ。 仲間と協力してバケモノをハンティングする人気タイトルである。 「あー…やりたいけど無理かもだわ。」 「は?」 「だって俺、プラステ4もってねぇし。」 因みに、プラステ4とはゲームハードの事。 今まで、バケハンシリーズ全部やってきたし勿論5もやりてぇけど… 高ぇんだよなープラステ5。 4万もしやがる。 バイトをして無い俺には、決して手が届かない代物だ。 「………」 「おい、何だその蔑む様な目は。」 「貧乏人め。」 腹立つわぁ、コイツめっちゃ腹立つぅ! 学校ではクール気取って冷たい印象流してやがるが、その実極度のコミュ症で友達が俺しかいない癖に! だかしかし、イケメンなので学校では孤高の王子と裏で呼ばれ、女子の間じゃファンクラブまであるらしい…。 ケッ、何が孤高の王子だ! 俺も何とか王子とか呼ばれてみてぇもんだわ!はんっ! 「…いいから、さっさと買えよな。」 「金ねぇから無理。」 「はぁ?」 「はぁ?じゃねぇよ」 「じゃ、貯金下ろせ。」 「してねーよ、んなもん!てかどんだけやりてぇんだよ!1人でも出来……あ。」 そこで、察してしまった。 バケハンの醍醐味は仲間との協力プレイだという事を…。 ソロでも出来ない事はないけど……俺だったらやる気しないな、うん。 「おい、何だよその目は。」 「いや…何かごめん…うん。」 「お前……腹立つわぁ。」 さっきの仕返しじゃボケェ! ……って、怖い怖い! そんな顔で睨むなよ! イケメンのにらみつけるにどれだけの凶悪さがあるかわかってんの? 俺の防御力グングン下がっちゃうからマジで!! 「悪かったって、金貯まったら買うからそれまで待っててくれよ。」 結局、防御力を下げられて最後は下手に出てしまう……いつもこんな感じだけど、我ながら情けねぇぞ俺!! 「ぜってぇだぞ、すぐ買えよ?」 どんだけやりてぇんだコイツは。 「分かったよ……あ、てか家着いたわ、またなー。」 俺は、玄関に逃げ込む。
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