無謀な婚約

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『感謝か!』 部長はカラカラと笑った後、上機嫌な声で言った。 『専務に報告するのが楽しみだよ。まさかこう決着するとは思わなかっただろう』 「目的はご自分の手を汚さず彼女を退職させることですから、きっとご満足頂けると思いますが」 僕が専務を皮肉ると、部長は声をひそめた。 『ここだけの話、専務は君を婿に欲しがってたんだよ』 「それは惜しいことをしました」 『よく言うよ』 西野円香とのことを知ったら、麻生部長は呆れ返るだろう。 「でも彼女の返答次第ですから」 『ま、うまくいく気がするよ。とにかく良かった。うちの奥さんも喜ぶよ。彼女に同情してね。何とかしろって煩いんだよ』 「そういえば奥様は?」 『風呂だ。静かでいい』 「奥様によろしくお伝え下さい」 『ああ。じゃあまた明日』 電話を切ると、駅の雑踏を抜けて外に出た。
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