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「瀧沢さん、運転は?」
また黙り込んで何故か鼻をフンフン鳴らしている彼女に質問を向けると、彼女はひどく驚いた様子で背筋を伸ばした。
「ぺっ……、ペーパーです」
職務質問でも受けたようなおかしな挙動で、ついいじりたくなる。
本当は、免許さえあればペーパーであっても国際免許証は取得できるから問題なかったのだけど。
「いつから?」
「えーと…学生の時からです…」
「それから一度も?」
「はい……」
だんだんと座高も声も小さくなっていく。
正真正銘のペーパーらしい。
彼女をいじる格好のネタを見つけた僕は内心ニヤリと笑った。
「気が早いですが、結婚後、いずれ海外赴任があるはずです。プラント周辺は車がないと生活できない地域なんですよ」
僕の真面目な声で、彼女の座高がさらに小さくなった。
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