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翌週の週末は、彼女と婚約指輪を受け取りに御徒町に出掛けた。
結婚指輪を選んだ高級ブティックとは真逆の、色気の欠片もない雑居ビルの事務所のような店舗だ。
最初、僕が銀座の高級店に連れ込むと、彼女は結婚指輪の時と同様、緊張で固まってしまった。
その機に乗じて決めてしまおうとする僕に、彼女は今度は頑として首を縦に振らなかった。
素直な彼女には滅多にないけれど、意に沿わない時の彼女の抵抗ぶりは、まるで突っつけば突っつくほど甲羅に頭を引っ込める亀だ。
まあ、亀より可愛らしいけど。
彼女が喜ぶポイントは僕が思うのと少し違うらしい。
最近ようやくそれが分かってきた。
高級店のステイタスを喜ぶ女とは対照的に、彼女は同じものを買うなら“何円安く買えた”ことに至上の喜びを感じるのだ。
スーパー特売の大根じゃないんだからと思わなくもないけれど、とにかく彼女が喜ぶならそれでいいのだと仕方なく納得する。
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