密かな確執

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数日が過ぎた翌週の半ば。 朝から昼過ぎまで続いていたアテンドから解放された僕は、自席で遅めの午後をスタートさせていた。 パソコンが立ち上がるのを待つ間、引出しから眼鏡を取り出した。 トレンドに反して、若干のおっさん臭漂うメタルフレームだ。 元々視力は良く、これまで眼鏡とは無縁だったけれど、最近は乱視がきつくなってきたのでパソコン仕事では眼鏡をかけるようになった。 メタルになったのは、セルフレーム推しの女性店員があまりにしつこく“女性受けがいい”と殺し文句を繰り返すのに嫌気がさしたせいだ。 確かに眼鏡デビュー時は周囲の女性社員から「冷たく見える」「いやメタルもいい」「セル顔が見たい」と勝手な感想が飛んできた。 女性は男の眼鏡にこだわりが強いらしい。 でも、僕にとっては画面がはっきり見えればそれでいいのだ。 眼鏡で思い出した。 そういえば僕の仕事姿を見たいなどと言っていたけれど、あれからまだ彼女は姿を見せていないと思う。 桐谷が居たんじゃ来にくいよなと、斜め後ろをチラリと見た。
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