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不思議なもので、最初は特徴がなく平凡に思われた彼女の造作一つ一つに、今では愛着を感じて仕方がない。
小ぶりな鼻は絶妙な案配に思えたし、世間的にはあまりうまく整えられていないと言われるのかもしれないけれど、薄く形が不明瞭な眉は彼女の優しい性格を表しているように思えた。
“完璧美女型ロボットじゃないですよね?”
完璧なものは味気なく、何も心に訴えてこない。
プロの手で綺麗にメークを施されていても、恥ずかしそうにカメラを見つめるどこか素朴な笑顔に癒される。
世の中完璧でないものだらけなのに、彼女だけを特別扱いする自分を笑いつつ、よっこらしょと起き上がった。
「もう一本だけ、頑張ろう」
ところが、猫ミッションの前にもう一度と画像を眺めた僕は、彼女の腰にしっかりと手を添える自分の姿にあの時の焦りを思い出してしまった。
女に不自由していないはずの桐谷がむき出しにした彼女への未練と、彼女が返した強い感情。
現実を突きつけられたあの時の映像は、様々に僕を苦しめる。
完璧なものが味気ないなら──彼女は桐谷の弱さや歪みを愛したのだろうか?
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