彼女の拒絶

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『どうかしたんですか?』 「来月、出席者の変更があるかもしれないから」 『変更?こんな土壇場で?』 「うん。人事異動の時期だからね」 『あ、そうでしたね…』 「まあ、あるとしても一部だから大丈夫だよ。大幅な人数の変更はないはずだから」 失脚を知った瞬間の専務と桐谷を観察できないのが残念だ。 もしかしてタイミング良ければ桐谷は拝めるかもしれないけれど。 復讐は僕だけがやればいいことで、彼女にはただ幸せな花嫁になってほしい。 でもクーデターに関わる話題を引っ張るのは危険なので、僕は話題を変えた。 「ごめんね。せっかくのゴールデンウィークなのに、あいにくの出張で台無しだな」 『大丈夫です。今年は飛び石だし。引っ越しの断捨離でもやってます』 大荷物の中に座り、一見ガラクタに見える物たちと真剣ににらめっこする彼女が目に浮かぶ。 きっとゴミ袋に入れながら何度も謝り、また取り出すのだろう。 小さなものの命を大切にするから。
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