彼女の拒絶

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二日後の火曜日、僕は十日間のアメリカ出張へ発った。 土日両方を私事に潰していた僕は出張間際まで忙殺されて彼女に電話できず、結局あれっきりにしてしまったことが悔やまれた。 今回、現地に着くのは早朝で、ホテルに荷物を入れたら即、一日目の予定をこなすというきついスケジュールだった。 しかも機内ではぎりぎりまで調べ物と書類作成をしていたため、ほとんど睡眠を取れていなかった。 昼夜が逆の時差の関係で、彼女が夜に部屋でゆっくりしているタイミングを掴まえるにはアメリカの朝に電話するしかない。 この間の空気を少しでもリセットしたかったので、僕は眠気覚ましのコーヒーを飲む時間を捨てて電話した。 一コール、二コール。 くたびれた身体をソファに預け、おとなしやかな声が応えてくれるのを目を閉じて待つ。 何よりも僕を癒してくれる、優しい声。 けれど、何コール待っても、電話が応答することはなかった。
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