彼女の拒絶

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「帰国は予定通りだけど、今回は持ち越しの宿題が出てしまいそうだから五月は休日出勤が増えるかな」 確かにそうだけど、帰国後二週間で完徹しなければならない極秘の猫ミッションもある。 彼女と会う時間を削るしかないのが残念だ。 「でもできるだけ片付けて帰るよ。じゃあ、おやすみ」 『あのっ!』 時計を見るともうそろそろ出る時間だったので彼女におやすみを告げると、それまで僕の問いかけに答えるだけだった彼女が僕を引き留めるように声をあげた。 何を言ってくれるのか、耳を澄ませる。 『えっと、あの……気を付けて帰ってきて下さい』 「うん、ありがとう。行ってくるよ。おやすみ」 聞こえたのは、一生懸命にひねり出した可愛らしく控えめな労いの言葉だった。
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