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猫の保護施設は思ったよりこじんまりと目立たない、一軒家のような建物だった。
「こんにちは」
カラカラと古ぼけた引き戸を開けると、中は誰もいない。
「すみません、どなたか……うわあっ」
無人と思ったら、門番のような威圧感のある灰色の猫が景色に溶け込みつつ正面に座っていて、僕は驚きのあまり飛び上がった。
向こうは微動だにしない。
「……」
絡まる視線、ゴクリと鳴る僕の喉。
正直……怖い。
僕を面倒臭そうにジロリと睨みあげた猫は、しばらくののち「フー」とも「ヨゥー」ともつかない、妙な声をあげた。
どう贔屓目に見ても「不合格」と言われた気がして仕方がないのはヒガミか。
「あ、お電話下さった方ですね」
この均衡をどう破ればいいものか、直立不動で猫と見つめあっていると、ようやく奥からスタッフが出てきた。
お世話中だったのか手には一匹の猫、足元にも物見高い猫が一匹付いてきている。
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