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「すみません、ちょうどお世話していたので、とりあえず奥へどうぞ」
「あ、はい」
灰色の門番猫にジロジロと眺め回されながら、あっさりと踵を返すスタッフに慌てて続く。
奥の広い部屋にはたくさんのケージが並んでいて、その中にいる猫やら外でウロウロしている猫やら、とにかく猫だらけだった。
「ケージに慣れさせるのに一苦労なんですよね。自由に暮らしてきた子たちだから」
猫たちがいっせいにスタッフめがけて寄ってきたので、思わず後ずさりする。
「茶色い子がご希望でしたよね?ご自由に遊んであげてください」
当然僕が猫好きだと思い込んでいるスタッフから、紐の先に大きなボンボリがぶら下がったヘンテコな棒を渡される。
そんな、自由に遊べと言われても。
いきなり猫の大群の中で放置プレイを受けた僕は棒立ちになった。
茶色、茶色……。
突っ立ったまま、首だけ動かして茶色の猫を探す。
早く決めて、早くこの猫地獄から脱出しなければ。
「……うっ」
いつのまにか寄ってきていた猫にオモチャを引っ張られ、呻き声を噛み殺した。
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