彼女の拒絶

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電話でコンタクトを取った際に念押しされたのは贅沢な環境ではなく、何があっても家族の一員として最後まで愛情を注ぐ覚悟だ。 ペットショップで子猫を購入して一から育てるのと違い、躾しにくく懐きにくい野良猫を飼うのは生半可なものではない、と。 無償で貰い受けられるだけに、転勤や離婚の他、懐かないからとの心変わりで再び安易に捨てられる猫も多いという。 “一時的な感傷や興味ならご遠慮頂きたいんです” 電話で聞いた厳しい言葉を思いだし、ぐっとオモチャを握りしめる。 ここで実は猫苦手ですなんてバレたら、絶対にまずい。 僕がなかなか猫と遊ぼうとしないせいか、部屋の向こうで子猫の世話をしていたスタッフがちらりと怪訝そうな視線を向けてきた。 おい早く行け、為せばなる。 悲壮な覚悟で一匹の茶色猫ににじり寄り、恐る恐るしゃがんでみる。
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