彼女の拒絶

6/26
前へ
/26ページ
次へ
「でも何でまた急に猫を飼おうと?」 「実は来月、結婚するんだよね」 他人からすると脈絡がないように聞こえるかもしれないけれど、僕的には真っ当な理由だ。 僕の腕の中に、彼女が喜ぶ小さな世界を作ってやりたい。 まあ「猫で釣る」という言い方もあるが。 「へえー……ええっ?」 僕の返事を耳半分に聞きながらスマホをいじっていた水野が、驚いた拍子にスマホを落っことした。 「まさか……マジすか」 「うん。昨日、招待状も発送してきたよ」 「エイプリルフール?」 「もう五月に入ったよ」 驚きのあまり、猫を飼う理由からずれていることはスルーしてくれたようだ。 「政略結婚とか何か裏が?」 「ないよ。僕らしく純粋な結婚」 真面目くさって答えると、スマホを拾いあげていた水野が「純粋」で吹き出した。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3003人が本棚に入れています
本棚に追加