3105人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「僕も一緒にやろうかな」
「でも……お仕事は？」
「疲れたから息抜き」
仕事中のパソコンを閉じて、彼女にぐっと椅子を寄せる。
肩が触れただけで、心身の疲労が癒されていく気がした。
ただ、元気になりすぎて、触れたい触れたいと騒ぎ始める中高生レベルの煩悩には困ったけど。
煩悩はさておき、のどかな午後の時間はまったりと過ぎていく。
彼女が作図ソフトで丸テーブルの円を描く間、僕は円卓のメンバーと席順を考える。
結局、帰国後も桐谷への案内状は出せないままで、今は机の引き出しの中にある。
彼女は招待客の中に桐谷がいないことに安堵するのだろうか、それとも恋しく思うのだろうか。
彼女の動機を知る僕は、彼女に目的を遂げさせてやるべきか考えると、今でも迷うし苦しくなる。
あのドレスは、桐谷に見られることになると知っていて決めたものだろうに。
そこまで考えた時、努めて忘れ去ろうとしていた遭遇の不愉快な場面が甦って、消化しきれない嫉妬がさらに僕を苦しめる。
そんな僕の複雑な胸中など知る由もなく、隣では彼女が一心に作業していた。
最初のコメントを投稿しよう！