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腕を伸ばせば逃げてしまう、まるで猫との攻防戦だ。
「ログインパスワードはとりあえずフルネームにしておくけど、後で好きに変えてくれたらいいよ」
パスワードは“riekuroki”と僕の姓で設定した。
名前も心も身体も何もかも、早く僕のものになって。
引っ越しを急げば進歩するはずなのに、猫ミッションのサプライズのせいで足止めを食っているのがもどかしい。
「今は時間がないけど、次に使う時までに余計なものを削除して掃除しておいてあげるよ」
僕の無味乾燥なパソコンは、彼女に染まっていくのだろう。
「掃除って、別に怪しいものなんか無いからね。言っとくけど」
冗談のつもりで付け加えたら、彼女はしばらく困った顔をしたあと、頬を染めて神妙に言った。
「……もし変な画像とか見つけても、嫌いになったりしません」
「だから無いってば」
僕の脳内には山ほどあるけどね。
そんな可愛い覚悟を聞いたら、さらに増えてしまったじゃないか、彼女にやってみたいアレコレが。
僕の脳内を見たら、彼女は飛んで逃げるだろう。
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