彼女の拒絶-2

2/26
前へ
/26ページ
次へ
後退りでとうとう部屋の角まで追い詰められる。 逃げようにも、うごめく猫で足の踏み場もない。 そのうち、ついに屈強な猫にボンボリをむしりとられてしまった。 「にゃぁぁ!」 すると僕にたかっていた猫たちは一斉にボンボリに飛び付き、ボンボリは猫団子のような山の中に埋もれて見えなくなった。 当たり前だけど、猫たちは僕ではなく、本気逃げで激しく揺れるボンボリに食いついていただけらしい。 僕がそんなに好かれる訳ないのだ。 何となく拍子抜けしながらホッと息をついた僕は、ふと少し離れた場所にいる猫に気がついた。 その猫はボンボリ争奪戦には加わらず、なぜかじっと僕を睨み付けている。 茶色の縞で少し細め。 いつか御徒町で見かけた猫と同じ色で、探していた条件だ。 だからという訳ではない。 なぜだろう? 条件云々ではない何かに引き留められて、僕はその猫から視線を外せなくなってしまった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3168人が本棚に入れています
本棚に追加