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後退りでとうとう部屋の角まで追い詰められる。
逃げようにも、うごめく猫で足の踏み場もない。
そのうち、ついに屈強な猫にボンボリをむしりとられてしまった。
「にゃぁぁ!」
すると僕にたかっていた猫たちは一斉にボンボリに飛び付き、ボンボリは猫団子のような山の中に埋もれて見えなくなった。
当たり前だけど、猫たちは僕ではなく、本気逃げで激しく揺れるボンボリに食いついていただけらしい。
僕がそんなに好かれる訳ないのだ。
何となく拍子抜けしながらホッと息をついた僕は、ふと少し離れた場所にいる猫に気がついた。
その猫はボンボリ争奪戦には加わらず、なぜかじっと僕を睨み付けている。
茶色の縞で少し細め。
いつか御徒町で見かけた猫と同じ色で、探していた条件だ。
だからという訳ではない。
なぜだろう?
条件云々ではない何かに引き留められて、僕はその猫から視線を外せなくなってしまった。
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