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「……」
じりじりと距離を詰めながら話しかけようとしたけれど、何も浮かばない。
うちに来る?
うちに来い。
うちに来て頂けないでしょうか?
緊張のあまり浮かんだ変な三段活用にアホかと自分で突っ込んだ。
でもとにかく一匹手懐けなければ、この猫地獄からの脱出……もとい彼女への最高のプレゼントは叶わないのだ。
とりあえずスキンシップだろう。
撫でる、猫がゴロゴロと満足気に喉を鳴らす、ミッション完了。
しかし、そんな絵に書いたように事が運ぶはずもない。
どこを撫でれば猫様のお気に召すのか、猫と無縁だった僕にはまったく予備知識がなかった。
下調べしておかなかった自分を叱咤しても仕方がないので、とりあえず頭かと恐る恐る手を伸ばす。
すると猫は小さな身体に警戒心をみなぎらせ、いよいよ僕を睨み付けてきた。
「あ、その子ね」
子猫の世話を終えたらしいスタッフがこちらにやってきた。
「来た時は痩せててね、人嫌いが激しかったんですよ」
スタッフにはもうすっかり慣れたらしく、猫は従順に抱き上げられるままになっている。
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