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その猫を見る僕の目があまりに未練がましかったのか、ついにスタッフが軟化した。
「抱っこしてみますか?」
「えっ?…は、はいっ」
バカ狼狽えるな、余裕を装え。
猫地獄、いよいよ正念場。
唾を飲み込み、腕を伸ばす。
「フーッ」
ところが茶色猫は僕が腕を伸ばすと、途端に威嚇してきた。
やっぱり子猫にしますと言いそうになるのをこらえ、覚悟を決めて猫の両脇に手を差し込んだ、が。
「フ……ギャァァーッ」
「あらあらあら」
スタッフの手から僕に渡されると悟ると、猫は大暴れしてスタッフにしがみついた。
「やっぱり駄目みたい。猫を飼った経験、あまり無いですよね?」
「はい……実は皆無です」
「どうして猫を飼おうと?それも野良猫を」
そこで僕は微かな望みをかけて、こちらの事情を打ち明けた。
彼女が可愛がっていた野良猫を恋しがっていること。
彼女なら愛情を注ぐに違いないこと。
ペットショップの猫では意味がないと思うこと。
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