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保護施設のスタッフは、事前に連絡しておけば営業時間外でも来ていいと言ってくれた。
でも肝心のあの猫本人は帰り際まで僕を断固拒否していたし、頑として僕を受け付けてくれそうにない。
「誕生日に間に合わないかな…」
夕暮れの混み合う道路はなかなか思うように進めず、ブレーキを踏みながら溜め息をついた。
子猫なら誕生日に間に合うのに。
というより、そもそも猫なんて思い付かなければ誕生日を楽々凌いで、彼女と会う時間を削らずに済むのに。
どうしてあの見目に優れた訳でもない、言っちゃ悪いが平々凡々ないかにも野良の、しかも僕を毛嫌いする猫にこだわる?
あの猫を諦める理由を探して、あれこれマイナスポイントをあげつらう。
ところが、帰りがけに撫でようとしただけで「ふぎゃー」と歯を剥かれた場面を反芻していた僕は、あることにはたと気づいて思わず笑ってしまった。
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