彼女の拒絶-2

8/26
前へ
/26ページ
次へ
保護施設のスタッフは、事前に連絡しておけば営業時間外でも来ていいと言ってくれた。 でも肝心のあの猫本人は帰り際まで僕を断固拒否していたし、頑として僕を受け付けてくれそうにない。 「誕生日に間に合わないかな…」 夕暮れの混み合う道路はなかなか思うように進めず、ブレーキを踏みながら溜め息をついた。 子猫なら誕生日に間に合うのに。 というより、そもそも猫なんて思い付かなければ誕生日を楽々凌いで、彼女と会う時間を削らずに済むのに。 どうしてあの見目に優れた訳でもない、言っちゃ悪いが平々凡々ないかにも野良の、しかも僕を毛嫌いする猫にこだわる? あの猫を諦める理由を探して、あれこれマイナスポイントをあげつらう。 ところが、帰りがけに撫でようとしただけで「ふぎゃー」と歯を剥かれた場面を反芻していた僕は、あることにはたと気づいて思わず笑ってしまった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3143人が本棚に入れています
本棚に追加