君の名を呼べば-2

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「……手遅れかと思った」 しばらくして幾分か落ち着きを取り戻した僕は、彼女の髪に顔を埋めたまま呟いた。 愛しさに比例して、後悔と不安が募る。 抱き締めていてもまだ苦しかった。 「指輪が返されてたから」 彼女は一度、僕に別れを告げることを決意していたはずだ。 僕に呆れ、桐谷に揺れたとしても仕方がない状況だ。 「えっ?」 でも、意外にも彼女は驚いた様子で、僕の胸から顔を上げた。 「違います!あれは……あれは、その……眺めてたんです。きれいだなぁって」 口ごもり、目が泳ぐ。彼女は嘘が下手だ。 「だからその……お引っ越しは、まず指輪からと思って」 これはきっと彼女が僕のためについてくれる優しい嘘。 だって頬が荒れるほど泣いていたんだから。 幾筋も頬に残る涙のあとを、そっと撫でる。
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