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先週、僕の部屋に来てくれた時の彼女の優しい表情が浮かぶ。
あの時彼女はすでに僕の過去を知りながら、あんな風に笑ってくれたのだ。
その陰にどんな葛藤があったことか。
もう一度誰かを信じようとして残酷に踏みにじられた彼女の絶望を思うと、苦しくて苦しくて仕方がなかった。
彼女に届くなら、空に向かって大声で叫びたかった。
なかなか来ない電車を待つ間、また携帯を握り直し、桐谷の番号を呼び出した。
何かの折に登録はしたけれど、僕から電話するのは初めてかもしれない。
出てくれ、出てくれ。
歯を食い縛り、目を閉じて念じる。
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