2806人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女と一緒にいるのだろうか?
桐谷にかけるのは不本意だけど、真実を伝えるためなら手段を選んでいる場合ではない。
何コールも何コールも、ひたすら携帯は呼び出し続ける。
そのうち、彼女と同じく、不通を伝えるアナウンスが流れてきた。
何回かけても、それは同じだった。
「……出ろよ!」
思わず声に出して吐き捨てる。
彼女が消えたのは、桐谷が彼女と接触したことから起きたのは間違いない。
そして二人とも電話に出ない──。
一縷の望みをかけて僕のマンションへと電車を乗り継ぐ間、消しても消しても頭を埋め尽くしていく嫌な想像と必死に戦う。
独りぼっちで泣いているのか、
それとも二人を阻んでいた障害が取り除かれたと桐谷と手を取り合っているのか。
どっちがマシなのか分からなかった。
彼女を泣かせたくない。
僕の手で彼女を守りたい。
それだけじゃなく、結局のところ僕が、僕自身が、彼女を必要としていた。
いつのまにかそうなっていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!