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突如、天から舞い降りてきたように、彼女はそこに居た。
彼女も驚いた表情で突っ立ち、目を丸くして僕をまじまじと見つめている。
ふんわりとした薄い水色のワンピースは彼女にとても似合っていて、その姿は僕の頭の中の彼女のイメージそのものだった。
僕は彼女恋しさのあまり頭がおかしくなってしまって、幻覚でも見ているのかもしれない。
頭がおかしくなったついでに、分析癖のある僕はうまく頭が働かないこんな時にも、ああこの色はお見合いの時に彼女が着ていた色だからか、と今考えなくてもいいことを考えた。
「あの……」
しばらくして、幻がもじもじしながらぎこちなく声を発した。
「お……おかえりなさい」
彼女らしい、少しはにかんだ顔。
おずおずとした優しい声。
ああ幻ではない本物の彼女がここにいるんだと、じわじわと実感が染み渡っていく。
「……里英」
それでも、なぜ彼女が指輪を返してまたここに戻って来たのか、事態の真相が分からず混乱した。
掴もうとすると消えてしまう気がして、僕は息を切らしながらただ彼女を見つめて立っていた。
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