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暴走してしまいそうだ。
唇は避け、苦し紛れに額に唇を付ける。
「今の僕は順序を守れそうにない」
彼女の心の準備はできているだろうか?
どうしても、それだけは大切にしたいのに。
「でも待ちすぎて、おかしくなりそうだ」
喘ぐように次々と言葉が漏れる。
彼女の前で僕は愛をねだる子供。
僕を愛して、受け入れて。
「指輪は、どんな時も離れたくなかったからです」
僕を見上げていた彼女が不意に伸び上がり、首にすがりついてきた。
同時に聞こえた言葉で、僕はさっきの彼女の優しい嘘の本当の意味を知った。
彼女は桐谷に微塵も迷いを残していない。桐谷から僕たちを守ろうとしたのだと。
「順序なんて、とっくに……」
僕の耳元に顔を埋め、恥ずかしそうに詰まりながら求めてくる。
強固に築いた理性の堰も、彼女の手にかかると呆気ない。
「ごめん、限界みたいだ」
それだけやっと口にして、僕は無我夢中で深く唇を重ねていた。
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