君の名を呼べば-2

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西陽が長い影を落とす廊下で僕たちは唇を重ねながら、立ったまま絡み合った。 彼女の息継ぎの間も、頬に瞼にキスの雨を降らせ続ける。 足りない。足りない。 唇だけじゃ足りない。 今すぐ、すべてが欲しい。 全身が叫んでいた。 キスをやめられないまま寝室に向かう僕に、彼女も足元をふらつかせながらついてくる。 「里英」 寝室入り口で、僕はようやく唇を放して彼女の目を覗き込んだ。 すべて見せていい? どれだけ僕が君を好きか。 どんなに君に触れたいか。 君を愛する男の行為を受け入れてくれる? 彼女は黙って僕を見つめ、小さく頷いた。
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