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池袋で乗り換え、ようやく彼女の自宅の最寄り駅に到着すると、ドアをこじ開けるように電車を降り、駅を飛び出した。
駅は小さく、駅前には地元民だけが利用するささやかな商店街があるだけで、大きな目抜き通りはない。
これまで車でしか訪れたことがないので、案内地図も標識もない生活地域の細い路地は最短の道筋が分かりにくかった。
間に合ってくれ。
頼むから待ってくれ。
焦りが余計に呼吸を苦しくする。
いくらか無駄な道を通った末にようやく彼女のアパートに辿り着き、近所迷惑なけたたましい足音を立てて階段を駆け上る。
桐谷が居たら、とんでもない修羅場になるだろう。
彼女に嫌悪の目で見られ、蔑まれるのかもしれない。
けれど後先を考えている場合ではなかった。
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