君の名を呼べば-2

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三階建の小さなアパートの廊下には誰の姿もなく、静まり返っていた。 彼女の部屋は二階。 いつも車の窓から灯りがつくのを待っていた部屋は、四つ並んだドアの奥から二番目だ。 気が急くあまり、階段口からわずか数歩でドアにたどり着いたかもしれない。 経年の細かい傷がついたクリーム色の質素なドアの横には、名前の表札の代わりに手書きの小さな猫の絵が入れてあった。 ここで間違いない。 強く押せば願いが叶うわけでもないのに、指に力を込めインターホンを押す。 応答を待ちきれず、二度、三度。 でも、荒い息を押し殺し耳を澄ませて待っていても何も聞こえず、人の気配も感じられない。 たまらずにドアを叩いた。 「僕だよ。黒木だ」 ……応答なし。 思い余ってドアノブを引くと、ドアは呆気なく開いた。 嬉しさよりもヒヤリとする悪い予感が背筋を走るのを感じながら、中に飛び込んだ。
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