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……探さなければ。
弾かれたように立ち上がり、彼女の家を飛び出して駅を目指した。
改札を通ろうとしてふと向きを変え、僅かでも彼女がいる可能性があるならと、小さな商店街のアーケードに入る。
商店街を行くのはお年寄りばかりで、採算がとれるのか心配になるような埃っぽいレトロな帽子屋や安物衣類を店先に吊った雑貨店が八百屋や肉屋に混じって軒を連ねている。
いくらもいかないうちに庶民的な店の連なりは自動販売機と壊れかけの古びた青いベンチをゴールにして終わってしまった。
再び駅に走りながら、また彼女に電話する。
他に探す場所は……?
コールを聞きながら、必死に手がかりを探す。
何も浮かばない。……何も。
通じない携帯を握りしめ、空を仰いだ。
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