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「……」
里英はしばらく押し黙ったままだった。
手のひらの中の頬から、里英の感情が伝わってくる気がした。
互いの幸せを願う気持ちも惜別の情も、僕が存在しない長い時間が紡ぎあげた、彼らだけのもの。
披露宴で桐谷が「幸せに」と言った時の表情を思い出して、部外者の僕はあまりの沈黙の長さにだんだん憎たらしくなってきた。
絶対、里英は今、桐谷と同じ表情で彼の幸せを願ったりしているに違いない。
こら。
いいけど、長すぎだ。
お仕置きに、痛くないようにムニッと里英の頬をつまむ。
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