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「晴ちゃん……可愛いなぁ。よし、父さんもお揃いにしよう」
てっきり既製品を買うのだと思っていたのに、父さんは迷わず反物から選び出した。
接客してくれる呉服屋さんの前で、僕は小さくなっていた。
だって、これじゃあ本当に女の子だ。
「あらあら、そちらもお似合いですよ。こちらの色違いもあてて見られませんか?」
優しい雰囲気のおばあさんが、ニコニコと接客をしてくれることが救いだった。
結局父さんとは色違いの反物を選び、あつらえてもらうことになった。
帰り道の父さんは行きよりもさらに上機嫌になっていて、仕事がはかどりそうだと嬉しそうに笑っていた。
*
「いーよなぁ、浴衣!俺も着たかったなぁ」
「碧も似合ってるよ………甚平」
元気いっぱいの碧には、とても良く似合っていると思う。
「………子供みたいだよね」
チラリと兄を見上げる海は、相変わらず変な色のコンタクトをして、左手に包帯を巻いていた。
暑くてかぶれないと良いけど。
「暑いから、早く電車に乗ろ」
ひとり言のように呟いて先に歩き出した海に、ニヤッと笑った碧が僕の耳元で囁いた。
「あいつ、朝からずっとソワソワしてたんだ。かわいーだろ」
「やっぱり……。花火大会、楽しみだったんだよね。海も誘って良かったね」
海にバレないように、僕たちはクスクスと笑い合った。
しっかり睨まれたけれど。
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