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僕らの地元のお祭りは、各地域ごとの小さなものばかりだ。
子供たちが喜びそうな規模のお祭りには、中学に上がると同時に参加しなくなった。
彼女でもいたら、違っていたのかもしれないけれど。
「藤は帰りどーすんの?まだ向こうに居るって?」
「ううん、一緒に帰るって言ってたよ」
朔太郎くんは数日前から前の自宅近くにあるおじいさんの家に帰省していた。
仕事でなかなか帰れないおばさんの代わりにおじいさんの相手をするんだって笑っていたから、きっと大好きなんだろうな。
「兄貴は泊まりだろ?」
「はっ?何言ってんのお前、ちが、いや違わねーけどちがう、違うからっ」
「こら碧、声が煩いよ。もう少しトーンを落として」
僕に注意されてグッと押し黙った碧はそれでも小声でブツブツと呟いていて、海に軽くあしらわれていた。
「でも、泊まるんだろ。何言い訳してんの」
「ちがっ、だから、あいつの妹が俺と遊びたいって言うから」
「……あいつ?」
ついつい会話に入ってしまった僕に、海が口を開きかける。
「海、余計なこと言ったら、今後お前のおやつは俺が食うからな」
碧、なんなのその脅し。
子供みたいだよ。
「……くっ卑怯だぞ、兄貴」
…………………海。
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