1593人が本棚に入れています
本棚に追加
「………晴太はダメだ」
急に後ろに腕を引かれて、耳元で朔太郎くんの声が聞こえた。
のし掛かるように背中に朔太郎くんが覆い被さって、彼の腕がダラリと僕の身体の前で交差している。
「あー……はいはい。心配しなくても、お前の大切なものを取ったりしないよ。……とっくに振られてるしね」
「……巽はあっち。晴太はダメだから」
「ちょっと、朔太郎くん何言ってるの……!先輩、すみませんっ」
まるで大型犬の威嚇みたいだ。
唸る朔太郎くんを見る八木橋先輩が、半分呆れたように笑っている。
「晴太君も大変だね。困ったことや朔太郎に泣かされるようなことがあれば、必ず俺のところに来るんだよ?」
八木橋先輩がそんなことを言うから、朔太郎くんの脱力していた腕がキュっと締まった。
先輩は優しいから、きっと朔太郎くんのことも心配なんだと思う。
頷いた僕の頭をふわりと撫でて、また海相手に話を始めた。
海が心底嫌そうに顔を顰めている。
先輩はこんなに優しいのに、一体何が気にいらないんだろう。
「……いた、ちょっと、朔太郎くんどうしたの?」
突然ゴシゴシと頭を擦られて驚いた。
「………触らせるの禁止」
「………………えっ?」
最近の朔太郎くんはいつもこんな調子だ。
僕はそれが恥ずかしくて……ほんの少し、嬉しかったりする。
最初のコメントを投稿しよう!