朔太郎くんの隣には

7/16
前へ
/432ページ
次へ
「………晴太はダメだ」 急に後ろに腕を引かれて、耳元で朔太郎くんの声が聞こえた。 のし掛かるように背中に朔太郎くんが覆い被さって、彼の腕がダラリと僕の身体の前で交差している。 「あー……はいはい。心配しなくても、お前の大切なものを取ったりしないよ。……とっくに振られてるしね」 「……巽はあっち。晴太はダメだから」 「ちょっと、朔太郎くん何言ってるの……!先輩、すみませんっ」 まるで大型犬の威嚇みたいだ。 唸る朔太郎くんを見る八木橋先輩が、半分呆れたように笑っている。 「晴太君も大変だね。困ったことや朔太郎に泣かされるようなことがあれば、必ず俺のところに来るんだよ?」 八木橋先輩がそんなことを言うから、朔太郎くんの脱力していた腕がキュっと締まった。 先輩は優しいから、きっと朔太郎くんのことも心配なんだと思う。 頷いた僕の頭をふわりと撫でて、また海相手に話を始めた。 海が心底嫌そうに顔を顰めている。 先輩はこんなに優しいのに、一体何が気にいらないんだろう。 「……いた、ちょっと、朔太郎くんどうしたの?」 突然ゴシゴシと頭を擦られて驚いた。 「………触らせるの禁止」 「………………えっ?」 最近の朔太郎くんはいつもこんな調子だ。 僕はそれが恥ずかしくて……ほんの少し、嬉しかったりする。
/432ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1593人が本棚に入れています
本棚に追加