朔太郎くんの隣には

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「おう、来たか。なんだお前らも浴衣かよ。なかなか似合ってんな……可絵ほどじゃねーけど」 女の子と比べるなんて、なんだかズレた発言がお兄さんらしい。 比べるまでもなく、重森さんの浴衣姿の方が可愛いに決まっているのに。 挨拶をしてから改めて場所を確認する。 前にも思ったことだけれど、お兄さんの私服の雰囲気は独特だった。 今だってどう見てもチンピラにしか見えない。 強面のお兄さんが場所取りをしてくれていたお陰か、僕らのレジャーシートの周囲だけ妙な空間が出来ている。 「あれ?愛花と可絵ちゃんは?」 「飲み物買ってくるとか言って、さっき屋台に行った。心配だから俺も行ってくるわ」 お兄さんがソワソワと立ち上がり、屋台への緩い坂を下りて行った。 「さて、ふたりは重森君に任せたら大丈夫そうだ。さっき話したみたいに手分けして買い出しして来ようか。で、誰かここに居て欲しいんだけど……」 海が怠そうに、自分が残ると言い出した。 碧が口を開く前に八木橋先輩が頷く。 「そう。じゃあ俺も留守番するから、みんな宜しくね?」 海をひとりで留守番させるのは女の子が留守番するのと同じくらい心配だった。 僕も碧も、ホッと胸を撫で下ろす。 あからさまに不満気な顔をした海に、八木橋先輩が爽やかな笑顔を向けた。 「馬鹿だね。君をひとりにしたら、すぐに絡まれるでしょ」 爽やかに毒を吐く先輩は、やっぱり楽しそうに見える。
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