朔太郎くんの隣には

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ずっと小走りだった所為で足が痛みだした。 履きなれない下駄で指の間が擦れてしまったらしい。 ピタリと自分の足が止まり、動かなくなる。 上ばかり見上げていた視線が、ジンジンと痛む足元に落ちた。 「朔太郎くんのバカ……」 背後で花火が打ち上がる音がして、一瞬だけ辺りが明るくなる。 だけど顔を上げる気にはならなかった。 だって朔太郎くんは見つからない。 きっと、僕と一緒にいるのが嫌になったんだ。 花火に向かうひとの流れに逆らって、のろのろと足を踏み出した。 ぶつからないように気をつけていたのに、急に僕の目の前に立ち塞がったひとに腹が立つ。 僕は前に進みたいのに。 馬鹿みたいだけれど、花火や賑やかなこの場所から離れたかった。 いつの間にか屋台の端まで来ていた。 明かりが唐突に消えるこの辺りは、打ち上がる数秒の間深い闇に包まれる。 しばらくじっとしていたけれど、目の前のひとはまだ動かない。 そろりと目を上げた。 ドォンと大きな音がして、空気が震える。 どよめきと歓声で、花火の美しさを感じた。 「………晴太。ごめん」 目の前の朔太郎くんが、僕の手を取りゆっくりと歩き出す。 誰か知り合いに見られるかもしれないこんな場所で手を繋ぐなんて、ダメだと言わなければいけないのに。 僕は何も言えなかった。 握りしめたお互いの手が、熱い。 汗ばんでズルリと離れそうになる手のひらを、その度に朔太郎くんが強く繋ぎ止めた。
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